2018年12月4日火曜日

2018/12/04

【最近のお気に入り】
(※画像は2018年個人的最優秀アートワークのPeewee Longway『State of Art』ジャケ)

2018年もラスト30日を切り、師走の空気を帯びはじめた最近ではありますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。毎年この時期になると雑談のなかで“今年の年間ベスト作品はなんだったか”という話題になったりするんですが、昨日の夕飯の記憶すらおぼろげな小生ですので、半年ほど前にリリースされた作品ですらも忘却の彼岸……。はたしてどれくらい備忘できるかわかりませんが、記憶の端糸を暗中から探る心持ちで書いていこうかと。まずは印象に残ったアルバムを順不同で10枚ほど。

Swamp Dogg 『Love, Loss, and Auto-Tune』
Soakubeats 『Crude』
Ella Mai 『Ella Mai』
Joji 『BALLADS 1』
■YELLOW MAGIC ORCHESTRA 『NEUE TANZ』
ゆるふわギャング 『Mars Ice House 2』
Kali Uchis 『Isolation』
SOB X RBE 『GANGIN』
03 Greedo 『God Level』
■Against All Logic 『2012-2017』

ストリーミング全盛の昨今、めっきり減ってしまったアルバム購入作品のなかから選んでみました。ヒップホップ作品ではトレンド関係なく、より個の音楽性を先鋭化させたような作品が耳を引いた気がします。そういったオルタナティブ性の反動として、よりシンプルに歌力に寄ったR&BアルバムであるElla Maiのデビュー作、コンテンポラリーでありながら選曲とリマスタリングの妙で唸らされたYMOのリイシューがあったのかなと。そんな趣向とはまったく関係ないところで今年いちばんビックリしたのはサザン・ソウルの巨匠、Swamp Doggのオートチューン・ブルース作品。そのほかにも好きな作品があったような気もしますが、30分ほど考えても思い出せないので今回は選外。この調子で楽曲単位のチョイスも順不同で10曲挙げてみます。

Awich “Love Me Up”
●DAM(Dorian and Mieuxxx) “部屋にひとりだから…”
Childish Gambino “This Is America”
Channel Tres “Controller”
BAD HOP “Diamond feat. YZERR & Vingo”
Kick a Show “Buchiaga Lit feat. Caryn10 & reverv kueen"
●Yuzo Iwata “幸せな結末”
●欅坂46 “少女には戻れない”
乃木坂46 “地球が丸いなら”
●tofubeats “ふめつのこころ 天野アイver.”

振り返りのために自分のiTunes内での再生回数を見ていたんですが、普段聴きのものはいわゆるポップ・ソングが多く、いつもDJでかけてるようなトラップ曲はあまり再生していないなと。疲れてたんでしょうか。上記に挙げたAwich、Childish Gambino、Kick a Showは楽曲はもちろん、MV内でのダンスや小さな身振りも印象深く、何度もリピートしていました。むりやりTikTokをはじめとするダンス動画の活況と結びつければ2018年的とも言えるのかもしれませんが、よくよく考えたら昔から振り付けのある音楽全般が好きなので、あまり関係ないかもしれません。アイドル楽曲では坂道グループにやはり勢いがありますね。ちなみに“少女には戻れない”はJamiroquai“Virtual Insanity”、“地球が丸いなら”はRAH Band“Clouds Across The Moon”へのオマージュ楽曲となっています。そして今年ほんとに最高だった曲が“部屋にひとりだから…”と“幸せな結末”の2曲。前者はDorian氏とみゆととさんの結婚パーティー来場者に配られたTK愛あふれる短冊シングルで、後者は昔から〈Kon Air〉というイベントをいっしょにやってたDJで、現在はベルリンで活動するYuzo Iwata氏(今年発表した初のシングルもバッチリでした)による、これまた友人の結婚を祝して作った大瀧詠一“幸せな結末”のずっこけカバー。どちらも多幸感を濃縮した楽曲で素敵でした。

音楽以外だとアメリカのドラマ・シリーズ『ATLANTA』や雑誌『STUDIO VOICE』のアジア音楽特集号などが印象に残っています。2018年に自分がした仕事のなかでは、紀伊国屋書店でMOODMAN氏に選書していただいた企画『アナろぐための80冊』の冊子制作、先にも書いたDorian氏とみゆととさんの結婚パーティー用のZINE制作が楽しかったです。では、今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします。

最後にお歳暮がわりになるかわかりませんが、先日ふと録音したDJミックスのリンクを置いておきます。暇なときにでも聴いてもらえればなと。パーティー後の朝、ダラダラと中華をつつきながら“モテとはなにか”みたいな話をして、帰りの電車でもボーッとそのことを考えながら帰宅、そのまま録音、といった感じで作ったものです。

shakke 『(AW)』
 

2013年12月31日火曜日

2013/12/31

【追悼】



ご無沙汰しております。ブログ更新なかなかできず、前回のポストが2ヶ月前という筆無精っぷりですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。いよいよあと数時間で2013年も終わりというところに、なんとも心臓をギュッと掴まれるニュースが……。ミュージシャンであり、元はっぴいえんどのメンバーとしても知られる大瀧詠一さんが昨晩お亡くなりになりました。解離性動脈瘤が死因で享年65歳。残念でなりません。思えば、自分が大瀧さんの存在を知ったのは中学生のころ。当時、父親がしてくる自慢話のひとつに“大瀧詠一の草野球チームと対戦したことがある”というのがあって、当初は元プロ野球選手かなにかだと思って話を聞いていたことを覚えています。ほどなく父親のレコード棚のなかからはっぴいえんどの初作『はっぴいえんど』と大瀧さんのソロ1作目『大瀧詠一』を掘り当て、熱心に聴きました。その頃から自分は音楽を聴きながらなにか別のことをするという悪癖があったのだけど、大瀧さんのアルバムには“ながら”に最適なサブテキスト……これまた父親の本棚からみつけた『All About Niagara』があったため、集中力が削がれることなく没頭できたのではないかと思います(余談ですが、自宅にある『大瀧詠一』、父親は初回プレスと言い張っていますが、B面ラストにカセットが止まる音が入っていないため、セカンド・プレス以降のものではないかと)。自分のおこずかいで買った最初期のCDもCD選書版の『大瀧詠一』。また、3歳年長の従兄弟もはっぴいえんどフリーク(彼はどちらかというと細野さん派であるようですが)であったので、親戚縁者の集まりで会うといつも大瀧さん及び周辺アーティストのよもやま話で盛り上がっていた気がします。高校生になりロックからヒップホップやダンス・ミュージックへ興味が移っても、自分のなかには“大瀧チャンネル”とでも呼ぶべき回路が別ラインで存在していて、ことあるごとに御大の作品を聴き返しては、海外旅行から帰ってきて真っ先にお茶漬けをすすり“やっぱりコレだよなぁ”とつぶやく日本人のごとく、安堵に浸るのでした。とはいえ、自分のなかで、リアルタイムで聴いていたクラブ・ミュージックとはある種の区別があったのは事実。その溝を埋めてくれたのは河出書房から出版されたムック『大瀧詠一総特集 〜大瀧詠一と大瀧詠一のナイアガラ30年史〜』でした。これに再録されている“ポップス分母分子論”はもちろん素晴らしいのですが、おなじくらい衝撃だったのはMOODMAN氏の寄せたコラム。ミュージシャンほか著名人各々が選ぶ大瀧さんのベストを選ぶ企画で、MOODMAN氏はたしか奇盤『LET'S ONDO AGAIN』を選んでいたと思うのですが(なぜか手元にこのムックがないため未確認。間違ってたら訂正します)、その慧眼っぷりに膝を叩きつつ、アイデアやユーモアという立脚点から音楽を眺めれば、ジャンルや時代性の溝なんて関係なくなるのだなと実感したのでした。その後、DJのCrystal氏ややけのはら氏、ギタリストのKashif氏、ceroの高城晶平氏、PHINGERINのデザイナーである小林資幸氏など、クラブが接点となり知り合ったひとと大瀧さんの話で盛り上がる機会も多くなり、そのたびに大瀧さんの音楽の偉大さを感じます。音楽を語る際のロジカルかつ徹底的にディテールに迫る視点や、落語や小津映画、巨人軍など、もはや学術的研究といっても過言ではない趣味への造詣の深さなど、大瀧さんから受けた影響は大きすぎて語りきれません。福生から自宅の埼玉県は入間市まで車で20〜30分。その地理的距離感から、お話しはできないまでも、お目にかかることくらいはあるんじゃないかとうっすら思っていましたが……。大瀧さんのことですから、あちらにも60年代のビルボード・チャート本1冊のみの荷物で行かれたのでしょう。どうか安らかに、天国でかの時代の音楽を反芻してください。

2013年10月9日水曜日

2013/10/09

【最近のお気に入り】



http://maltinerecords.cs8.biz/125.html

こちらもすこし前のリリースになりますが、tofubeats氏のアルバム『lost decade』のリミックス作をよく聴いています。okadada氏やAvec Avec氏、Osamu Ansai氏など、豪華なメンツが手腕を振るうアルバム(しかも無料)ですが、なかでも狂気を感じたのがVentla氏による“touch A (intuition)”。この曲の魅力をどうやったらうまく説明できるのかなぁと10分か15分くらい本当に悩んだ結果、ピカピカピカッ! っとクスリをやったときみたいにアイデアが飛び込んできました。ゆとり世代に向けて、この曲のテロップを書けばいいんだと。以下、長いですがご一読いただければ。

「はい、こんにちわ! 鈴木です! よろしくお願いしまーす。えー、今回tofubeatsさんから“お前もリミックスをやってみないか”というお話をいただきまして、それはもうぜひと、光栄ですと、快諾したんですけれども。まず、リミックスの前にひとつ、tofubeatsさん、ひいては皆さんに謝罪……まぁ、謝罪ってこともないんですけれども、ちょっとどうしてもお伝えしておかなければいけないことがありまして……。あのわたし、その、ビーツさんのこと存じ上げなかっ……存じ上げなかったって言うとちょっと正確じゃないんですけれども。ビーツさんの名前はもちろんなんとなく聞いたことはあったんですけれども、肝心の、音楽性というか、どういった方がどういった方向性で活動されているのかっていうのを、今回リミックスのお話をいただくまでまったく知らなかったんですね。ですんで、まずビーツさんに関してインターネットで調べてみたんですけれども、そしたらわたし大変衝撃を受けたんですが、なんと、ビーツさん90年生まれ。1990年生まれ。これはほんっとビックリしましたね。あぁ、そういう世代がもう出てきたかと。いよいよそういう時代かっていうね。しかも、ビーツさんを、ビーツさんの音楽を楽しんでる世代ってのも彼と同年代の10代後半から20代前半の若い子たちっていうのがね、これは衝撃でしたね。ビーツさん。だって90年生まれっていったら、わたしのひと回りふた回り下ですから。あぁ、もうそういう時代になったんだなぁっていうね。だって90年生まれっていったら、ビーツさん……ビーツさんにしてみたらもううんざりするっていうか、“もうそれいいよ”って言われちゃうかもしれないですけども、ちょっと心苦しいんですが、いわゆる90年っていったらゆとり世代なわけでね。これは聞いた話ですけど、ゆとり世代っていうのは、たとえばゲーム? ロールプレイングゲームなんかを買ってきたら、まず自分で考える前に真っ先にインターネットで攻略サイトを見て、攻略法を調べちゃうと。これはあくまでインターネットで見た噂なんで事実かどうかわかんないですけどね。あるいはバラエティー番組でテロップ出てるのが当たり前だっていうね、そういう世代なわけでね。そういったビーツさんの世代? ビーツジェネレーションの皆さんに、わたしのような、言ってみりゃおじんが、好き勝手なね、リミックス? おじんくさいリミックス? 旧態依然としたセンスのわかりにくいことをやっちゃってね、果たしてね、ビーツジェネレーションのみなさんにね、受け入れてもらうことができるんだろうかっていうね。なんせわたしなんて普段そんな……90年生まれの子たちと接する機会がまったくない……まったくないっていうかね、下手したらたぶん生まれてから一度も会話すらしたことないんじゃないかなと思うんですけど。要は、はたして、そんなね、ビーツジェネレーションの皆さんにね、受け入れてもらえることができるんだろうかっていうね。大丈夫かなぁ、リミックス大丈夫かなぁ、どうしようかなぁ、どうすればいいかなぁ、どうすればビーツジェネレーションの方々に喜んで聴いてもらえるのかなぁ、どうすればいいかなぁ、どうしようかなぁ、リミックスどうしようかなぁってね、これはもうほんとに悩んで、悩んで悩んで、どうしようかなぁって悩んでね、ほんとにね、10分、15分は確実に悩んだんですけれども、そんななかね、ひとつ“これだ!”っていうね、完璧? ほとんど完璧なんじゃないかっていう、リミックスに関してアイデアが浮かびまして。ほんとね、目の前がピカッ! って光るくらいね、なんつうの? クスリやったときみたいに、音に光がついて、色がついて、左右対称で、まぶたの裏にピカッ! って飛び込んでくるぐらいのアイデア……もうほんとクスリやったときみたいにピカピカッ、ピカッ! っていうね。ピカピカッ、ピカッ ピカピカッ、ピカッピカピカッ、ピカピカッ! っていうね、アイデアがピカピカッ! って浮かびまして。要は、どんなアイデアかって言うと、要は、リミックスの素材を……“なに喋ってんだよ、お前”って感じするかもしれないんですけど、ちょっといまから肝心のリミックスに関して説明するんで聞いてほしいんですけど。要は、ハイ、素材をいただきました、で、ハイ、リミックスをしました、で、その完成したリミックスの音源をそのままリミックスアルバムに収録してもらうんじゃなくって、そのリミックスした音源にね、わたしがたとえば自分自身で“ここ、いまからサビです!”とか“ここ、そろそろブレイク来ます!”とか“次の転調、聴きどころです!”とか、言ってみれば、それこそバラエティー番組のテロップみたいな感覚でね、あるいは、もっとわかりやすく言うと、映画のDVDのオーディオコメンタリーみたいな……まぁ、ちょっと違うけど、まぁ、そんな感じで、要は自分の作ったリミックスの音源に全部自分で同時進行で逐一言葉で解説を入れてくっていうね。そうすればゆとり世代の方々にもわかりやすいし、なにしろリミックスというものの形としても、ほら、なかなか斬新じゃない? ね? これは我ながら名案だと思って……言ってる意味、わかります? 大丈夫ですかね? そういうアイデアがね、ピカピカッ! ってね、クスリやったときみたくピカピカピカッ! って浮かんで。ですんで、いまから、いま説明したようなことを踏まえた上でリミックスに取り掛かろうかと思うんですけれども。その前に、まず件のね、ビーツさんのアルバムをちょっとね、聴かせていただこうかなと思います。これね、まだ聴いたことありませんから、ぼく。あの、名前しか調べてないんで。音の方向性みたいなものを確認しないと、あんまとんちんかんなことやっちゃってね、ビーツジェネレーションのね、ビージェネの皆さんに“なんだコイツ”と思われても困るんで、ちょっと。アルバムタイトルがね、音源いただいたんですが、なんと『lost decade』。『lost decade』ですよ! 失われた10年。失われた10年ってそんな……ちょっと悲観的、悲観的ってわけでもないけど……そん……まぁね、すごい、いかにも世代を代表する、こう、名盤の香り漂うタイトルって感じが、いかにもしますがねぇ。まぁ、『lost decade』ってそんな、ビーツさんも過去10年ひとつふたつはいいことあったと思うから、そんな……ねぇ? あんま後ろ向きっていうか、悲しい感じのこと言わないで、ちょっと……10年っていったらまぁ……これからがんばって取り返していきましょうよ、過去10年のぶん。ね? 大丈夫ですよ、ビーツさん。ね? がんばって! さぁさぁさぁ、えーと、じゃあね、いろんな曲、全部気になるんですけど、ちょっと適当によさ気……よさ気っていうか、こんな感じで……(“Les Aventuriers feat. PUNPEE”がかかる)おおっと! これはね、えーっとね、4曲目のね、レス……レス……レスアベンチュリーズ、フィート、プン……パン、プンピー? さぁさぁさぁ、これは……おおっと! これはラップですねぇ。日本語ラップ。おおっと、来ました! パーティー感覚あふれる、おおっ、なるほ……ハイハイハイハイハイ! あぁ、ハイハイハイハイ。あのねぇ、わかった! なんで、その、ビーツさんが同世代に支持受けるかっていうのをねぇ、ちょっとね……ハイハイハイハイ。ちょっと、いまわかりましたねぇ。こりゃ受けるわっていう。要はね、ラップ感覚? ストリート感覚。これですね。これが受けるんだなぁ! ハイハイハイハイハイ! さぁ、ラップが来ましたねぇ。これがね、この感覚がね、やっぱりぼくなんかにはね、圧倒的に欠けてる部分。やっぱこの発想ないもん、ラップって。さぁさぁ、ヨーヨーヨー、アハー? ヨーヨー、ユノー? さぁさぁさぁ、なるほど、ハイハイ。こういう感じなんですねぇ、トーフさん。tofubeatsさん。ビーツさん。なるほどねぇ。ハイハイハイハイ。さぁさぁさぁさぁ、えーとね、これはね4曲目のレスアベ……ンチュリアーズ、フィート、プン、パンピー……なんですが、こういう感じなんだなぁ! こう、ビーツさんに関してぼくがどう料理していくかってことなんですが。ラップ、出ましたねぇ。『LEGENDオブ日本語ラップ伝説』。なんだっけ? あの、澤田……澤田大輔さんが編集した本。知ってる? 『LEGENDオブ日本語ラップ伝説』っていうね、タイトルがインパクトありますけどね。ぼく、ちょっと読んだことない……すいません……。読んだことないっていうか、あの、ラップ、日本語ラップってほんと、この世でいちばん興味ないんじゃないかっていう……フハッ……興味ないとかいって、すごいケンカ売ってるみたいだけど、すいません、いちばん疎いジャンルなんで。ちょっと、ラップっていうので連想しちゃいましたけど。澤田大輔さんが編集した、そういうタイトルの本があるんですよ。『LEGENDオブ日本語ラップ伝説』っていうね。さぁさぁさぁ……そういえばさぁ、なんかいまさぁ、澤田大輔さんで思い出したんだけどさぁ、昔さ、『COOKIE SCENE』のね……あ、全然関係ない話だけど、昔、『COOKIE SCENE』のイベントが……ぼく、あの『COOKIE SCENE』って雑誌で、えーとね、ぼくと伊藤英嗣さんと佐々木光紀さんと、あと佐々木敦さんの4人で『COOKIE SCENE』って雑誌をやってて、まぁ、ほかの3人もうみんな死んじゃいましたけど。でね、その『COOKIE SCENE』のイベントが昔、ネストであって、そのときに、おれが物販をさ、ギャグっつうか冗談でさ、占拠して、勝手に“フリーマーケットだ!”とかいってさ、自分のいらないゲームとか雑誌とかをバーッて並べてね、“はい、蚤の市です”とかいってさ、売ってたんだけど。そのなかに、『COOKIE SCENE』のイベントなのに、自分の『米国音楽』のバックナンバーを15冊くらい並べてさ、“これ、大安売りです”とかいってさ、『米国音楽』1冊10円とかで売ってたの。そしたらさ、なんかさ、メガネかけた冴えないのがサササッって来てさ、“あの、すいません、『米国音楽』全部ください”ってパパーッって買ってってさぁ。ほとんど冗談で売ってたんだけど、1冊10円とか言ってたらそのひと全部買ってってさ。“なんだろうね? いまのひと”って言ってたんだけど。なんか、あとで判明したんだけど、そいつがじつは沢田太陽 a.k.a. 太澤陽だったっていうさ。フフフ……。それ聞いて、すっげー笑って。すっごいさ、いかにもさぁ、沢田太陽 a.k.a. 太澤陽っぽい行動っていうかさ。なんか、『COOKIE SCENE』のイベントにひとりでコソコソ来てさ、『米国音楽』のさ、バックナンバーをさ、まとめて買ってって、後追いのさ、インディーポップに関する知識をさぁ、いっぺんに後追いで詰め込もうとしてるっていうさぁ、いかにも沢田太陽 a.k.a. 太澤陽っぽいエピソードっていうかさ。くっだらねぇHMVのフリーペーパーでさぁ、しょうもない提灯原稿を垂れ流してるようなカスライターがいかにもやりそうな発想っていうかさぁ。全然関係ないけど、さっき澤田大輔さんって言ったから、澤田大輔さんと沢田太陽の名前が似てるから、なんか思い出しちゃったんだけど。すげー印象的っていうかさ、いかにもさぁ、なにがa.k.a.だっていうさぁ。おまえの名義の使い分けに関するこだわりなんてどうでもいいよ、バカヤロウ! 知るか、バカヤロウ! ひとりで言ってろよ、っていうさぁ。なんか、それを思い出したんだけど。まぁ……なんだっけ? あ、リミックスね。あぁ、そうそうそう。ハイハイハイハイ。えーと……すげー時間、食っちゃったな……。まぁ、そんな感じで、えーと、リミックス? ほんとは“touch A”って曲をお願いされていたんですが、関係ない話しちゃったんで、時間ねぇ……あまりねぁ、だって10分くらいしゃべってるでしょ、これ? 10分以上経っちゃったんで、ちょっとあんまりだろうっていうのもあるので、このぐらいにしとこうかなと思います。ちょっと余計なこと言っちゃったかな? で、なんだっけ? 『lost decade』? 『lost decade』って、まぁ、そんなねぇ、なんか大胆っていうか、ショッキングですけど、まぁ、これからがんばってね、10年分取り返していきましょうよ、ビーツさん。ね? がんばっていきましょう。ということで、ハイ、ありがとうございました。えーと、鈴木でした。えー、まぁ、そんな感じで、ハイ、よろしくお願いしまーす。ハイ、ありがとうございます。ハイ、失礼しまーす。ハーイハイハイ……」

ここで語られる内容を全面的に信頼するなら、Ventla氏の正体は音楽家でライター兼編集者の杉本拓也氏ではないかと。『COOKIE SCENE』創刊メンバーで、tofubeats氏のふた回り上の年齢、このひとを食ったようなユーモアのセンス(これに関しては想像の範疇を超えませんが)と、符号する点が多くあります。そうなると、冒頭の自己紹介にある“鈴木”なる人物とは? ますます謎は深まりますが、Ventla氏のオリジナルは上記で感じさせる狂気とは別ベクトルの魅力を持っており、そちらも大変素晴らしいので併せて聴いていただければと思います。



【追記】

いろいろな方からご指摘いただいたのですが、どうやらVentla氏の正体はPLAMO MILLION SELLERSの活動でも知られる鈴木周二氏でファイナルアンサーなようです。ご指摘ありがとうございます! 自分の無学が身に染みますな……。

2013年10月7日月曜日

2013/10/07

【最近のお気に入り】



先日発売されたele-kingの11号でtofubeats氏の「裏アカウントはもうたくさん用意してあるんで」という発言を読んで、ネットでの覆面名義の重要性とか意義について最近よく考えます。「だれも知らない名義で、ゼロから評価されることが大事」とtofubeats氏が語るように、一定の認知を獲得したアーティストが、音楽的モチベーションの源泉を匿名で再探究するという意識は世界的にも広がりつつあるように思います。たとえば上に挙げたTrippy Turtle。自分の周辺ではTrippy Turtle=Cashmere Catという認識で固まっていますが、実際はどうなんでしょう。Cashmere Cat自身は否定していますが……。また、覆面名義の正体を探る動きも活発で、ツイッター上で物議を醸したBurial=Four Tet説に端を発した#iamburialタグは、関係ないひとまで「俺がBurialだ!」と言い出したりして、一時トレンドワード的な扱いになってましたね。いま挙げた以外にもYolo BearDJ HoodboiDJ Paypalなど、覆面名義の憶測が飛び交うアーティストはたくさんいますが、なかでも個人的に気になってるのはblu-ray。“JWAVE”タグといい、わりと近しい人物のような……。かくにもこれらの動きは、匿名だからこそブートレグなリミックスを発表できるというメリット以外にも、ネットカルチャー以降失われかけていたアーティストの神秘性を改めてネットの力で取り戻す運動に思えてなりません。『ハリー・ポッター』シリーズのJ.K.RowlingがRobert Galbraithという覆面名義で著作を出す昨今、音楽以外でも複数のアカウントで作品を出すことが主流になってくるかもしれません。1人1レーベルの時代を超えて、1人1レーベル+複数人格の時代に変わっていく、ということなのでしょうか。

【最近の活動】


http://iflyer.tv/ja/event/154009/

10月18日は中目黒solfaの『NAVY RAY』でDJします。ゲストDJにMUTA氏、%C氏も出演と豪華。この日は最近の新譜のなかでもインテリ度高めの曲を多めにプレイしようかなと。代官山SALOONではErectionとTAKASHI-MENによるベース系パーティー『FAV』もやっているので、代官山~中目黒を回遊する感じで遊びに来ていただければ!

2013年10月6日日曜日

2013/10/06

【最近のお気に入り】



先日、WardaaDJ CAROLIECUTが自宅に遊びに来てくれた(埼玉までわざわざ!)んですが、そのときにカロちゃんから教えてもらった1曲です。メロディーも清涼感があるし、展開も粋で素晴らしいです。どこを切り取っても良さがありますね。ちなみにWardaaとのShakke-N-Wardaaとは別に、カロちゃんとFavorite SongsというDJユニットを組んで近々DJする予定です。こちらではトレンド関係なくいい曲ばかりプレイしていこうかなと。

【最近の原稿】

磯部涼+宇多丸+DARTHREIDER+高橋健太郎「ニッポンのラップ」座談会

すこし前になりますが、電子書籍版音楽雑誌ERISで連載している磯部涼氏の連載「ニッポンのラップ」の特別編として上記4名による鼎談の構成を担当しました。鼎談中は自分が言語化できてない部分を参加した皆様がしっかり説明してくれて最初から最後まで膝を叩きまくり。勉強になりました。本文中で個人的なアンダーラインは“ヒップホップにおいての国際ルール”というタームです。ちなみに当日は取材時間2時間超、その後の会食も含めると4時間近くの濃密なヒップホップ談義。ごちそうさまでした。

2013年10月5日土曜日

2013/10/05

【最近のお気に入り】



今年の5月にリリースされてたらしいのですが、最近知ってよく聴いています。音楽的には典型的と言っていいほど、いわゆるヴェイパーウェイヴな作品なんですが、メロディーの配置だったり音色が個人的なツボを押してくれます。

【最近の原稿】

音楽家としての衝動を作品へ。中田ヤスタカが語る“音楽理想論”

今月で休刊となるクラブ情報誌FLOOR.net誌の巻頭でCAPSULEの中田ヤスタカ氏へのインタビューが掲載されています。そもそもFLOOR.net誌は自分がライター業をはじめたころからのお付き合いで、休刊最終号での巻頭取材は非常に感慨深いものがあります。この場を借りてお世話になった編集部の皆様に感謝を。現在の音楽シーンのなかでピュアネスを維持しながら音楽制作にこだわることの意義について語った中田氏の談話も大変興味深かったです。

【最近の活動】

http://streetcypher2.tumblr.com/

10月6日は渋谷2.5Dで開催される『STREET CYPHER 2 MC BATTLE』にdodoのバックDJとして参加します。映像作家である大月壮氏発案の格闘技ゲーム×MCバトルという試み、大変楽しみです。USTREAMニコニコ生放送でも同時生中継するらしいので、日曜の夕方、ぜひお楽しみください。

2013年10月4日金曜日

2013/10/04

【最近のお気に入り】



以前、MTV81という番組の取材でお世話になったTaquwami氏の新曲。徹底した美意識に恐れいるトラックでした。“Wow”は8月に開催されたSeiho氏のリリパに彼が出演したときに披露していた(と思う)のですが、そのときから気になってた楽曲で、今回アップされてライブの感動が再びよみがえりました。

【最近の原稿】

鴨田潤/(((さらうんど))) INTERVIEW

(((さらうんど)))のリリースパーティーに向けて代官山UNITのウェブマガジンに掲載されたインタビューです。リリパは終わってしまいましたが(素晴らしかった!)、鴨田氏の作詞哲学が垣間見えるお話になっているので、アルバム『New Age』を聴きながら一読いただければ。

【最近の活動】

DUNK SHOT BROTHERS - TWILIGHT EP

今回はEPOによるシュガーベイブのカバー“Down Town”のリエディット(しかもライセンス許諾済みの公認リエディット)も収録してます。レコード屋さんなどで見掛けたら試聴だけでもしていただければ。何卒!